得意分野をのばす

・仕事術にもどる

   

 自分の欠点、弱点を気にして、何とか克服しようとする人が多い。

 自分の長所に目を向けた方が良さそうなものだが、つい欠点の方に目がいってしまう。

 その理由はいくつか考えられる。

(1) 小学校のテスト以来、大人になってからの資格試験にいたるまで、あるライン以上ならOK、それ以下は不可、という評価のされ方をしてきた。

(2) 過度の平等主義の中で、プラスにもマイナスにも目立つことが評価されなかった。

(3) 一般に、日本人は人の目を気にするので、欠点を見られたくない。

などなど。

 結局、試験でも、合格すればOKで、満点を目指すという人は少ない。



 ドラッカー曰く、「人は得意なことで成果をあげられる。苦手なことでは成果があげにくい。まして、できもしないことでは成果は出せない。」

 ・・・う〜ん、そのくらいなら私でも言えるぞ。



 実社会では、「赤点でなければOK」ではすまないし、100点が上限ではなくて、青天井だ。

 学校や資格試験と違って、仕事に関しては、得意分野を伸ばして活かす方が手っ取り早くて有効だ。

 しかし、小学校の時からの癖が抜けなくて、つい苦手分野の克服の方に手間暇をかけてしまう。



【余談だが】
 私の経験だが、得意分野を伸ばすというやり方は大学入試でも役に立った。

 私は入試に失敗して、1年間浪人した。その1年で、別人のようになったと思う。あの1年が無かったら、今の私はない。

 1年の内、4月からの半年は自宅で、後半の半年は京都に下宿して予備校に通った。

 自宅にいた半年間、ひたすら毎日化学の勉強をした。

 4月に浪人を初めて、7月か8月のある日、「ああ、化学とはそういうことだったのか!!」と悟りが開けた。というと嘘くさいが、要するに全体像が見えたような気がした。

 全体像が見えると、個々の問題を煮詰めるのは簡単だ。

 9月から予備校に通ったのだが、模擬テストの化学の試験では満点以外取ったことがない。引きずられるように、物理と数学もほぼ満点近くになった。

 どんな問題でも、読めば答えがすぐに分かるので、試験の時は、「いかにきれいに、採点者に分かりやすい答案を書くか」をテーマにしていたくらいだ。



 一方で、社会は日本史を選択していたのだが、いくら勉強しても、全く点数にならない。入試が近づくとほとんどの時間を日本史に費やしたが、無駄だった。

 社会は嫌いだったし、苦手意識がじゃまをしていたのだと思う。



 とは言え、残りの国語・英語はまあまあだったので、日本史の分は理科と数学で十分カバーできた。点数だけから言えば、東大だろうが京大だろうが、受ければまず落ちることは無かっただろう。

 実際には、田舎の大学でのんびりと学生生活を過ごしたのだが。

 要するに、長所を徹底的に伸ばせば、短所はカバーできる、ということだ。



【余談の余談】
 私は受験生活をほぼ完璧にマネージメントして、入試当日にピークを持ってくることができた。

 ところが、大学1年の3月に、戯れに大学入試の模擬試験を受けてみたら。

 完敗だった。ギターを弾いて歌ったり、酒を飲んでは朝まで馬鹿話をしている内に、1年間ですっかり腕が鈍ってしまったのだった。

 無敵の受験生は影もなく、それ以来今日まで、さしたる取り柄もない人生を送っている。

 ピークを維持することは難しい。