リターンロスブリッジ再考

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 4:1強制バランを2個背中合わせにする構成では、信号は4個のトランスを通過することになる。

 それなら、単に4個のフロートバランを直列にした場合と比較しなければ、強制バランの効果があったとは言い切れない。
 前回の実験のベンチをそのまま使ったので、きゅうくつだ。

 やむを得ずミミズがのたくったようになってしまったので、セパレーションには若干のハンデがあるだろう。

 これを(J)タイプとする。
  
 前回の、( I )タイプ(4:1強制バランタイプ)と比較してデータを並べてみる。

 以下すべて、左側が( I )タイプ、右側が(J)タイプのデータ。

  
  
 右側のT字の部分は出来るだけバランスを取ったブリッジだ。100Ωのチップ抵抗をデジタルテスターで0.1Ωの桁まで選別して、2個並列にしたものを、4セット使ってブリッジを組んでいる。

 コアはすべてFB-801-43で、まとめて買ったものの一部。結線は違うが、どのコアにも1cmあたり3回ひねった0.2mmウレタン線を、6回巻きにしてある。

 出来るだけ同じ条件にしたかったが、フロートバラン×4のタイプにはベンチが少し窮屈で、真っ直ぐ伸ばせなかった。

  
  
 まず、出力側がアースにつないでいない場合。

 (J)タイプの方が構造が簡単な割に、特性が暴れていて、すでに怪しい。

 縦軸が10dBずれているので注意。

   
  
 ( I )タイプは、ベストのデータ(X点とa点をアースした状態)。低い周波数での特性がかなりよい。

 (J)タイプは、入力と出力の同軸ケーブルの網線を直結した。凸凹がかなり改善された。

 縦軸が10dBずれているので注意。

  
  
 0~200MHzを拡大した。

 ( I )タイプの方が低い周波数まで伸びていて、全体に(J)タイプより10dBほどよい。

  
  
 ブリッジの片方をショートして、バランスを崩し、通過ロスを見てみる。

 これは(J)タイプの方が4dBほど良いようだ。

 4枚のグラフの比較では分かりにくいので、ブリッジがバランスした時と、バランスを崩した時の差をとって、一枚にまとめてみた。

  
  
 前回( I )タイプの性能が良いと結論したが、(J)タイプも40MHz~200MHzでは5dBほどしか違わない。この範囲であれば、どちらでもまあまあの性能と言って良い。

 160MHzまでは最悪で35dBだから、どちらでもSWRは1.04まで測れる。私の使い方では十分以上だ。

 結局、4:1バランを背中合わせに2個使う、という複雑な構造を考えると、( I )タイプの優位性にちょっと疑問が出てくる。

 単に、フロートバランの数を増やせば良いのであれば、その方が簡単に性能を出すことができる。



 とは言え、素人の作るリターンロスブリッジの限界を突き詰めてみたい気もする。

 低い周波数で性能の差が開くようなので、ここは、さらに0~40MHzの特性を詳細に比較してみなければなるまい。