ヘンテナの実験

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 周波数は433MHzとする。ループアンテナは短縮しない(か、少し長めにする)ということなので、短縮率をかけずにλ/2×λ/6の長方形を作る。

 材料は1.2mmの銅線と細い角材。

 実験なので、ビニルテープでくるくるととめただけだ。

 端から、マジックで、1cmごとにマークをつける。
 本棚にクランプで固定する。

 給電点は0.15~0.20λの間らしいので、まずは0.20λの所に半田付けしてみた。
 計算よりずっと高い周波数にディップが有る。

 何か本質的な間違いをしたか?

 計算をし直しても、間違いはない。

 ファンヒーターが近いのが良くないのかと、部屋の外に出してみたが、無駄に寒いだけだった。
 気を取り直して、給電点の位置を1cm移動させる。

 ディップの周波数が8MHzも下がって、SWRは悪化した。

 なお、定期的にディップがでているのは、SWRが悪いので、同軸ケーブルに定在波が立っているのだろうと理解している。

 SWRが1.0に近づけば、平坦になると思うのだが。
 さらに1cm移動。

 11MHz下がって、SWRがさらに悪化した。

 もう気にせずに、どんどん移動して、測定してみた。
 なお、実験したヘンテナの実寸は右の通り。

 周波数を433MHzとして、短縮率1.0で計算したものだ。

 表中、「距離」とあるのは、右図の「xcm」のこと。
 SWRはリターンロスから計算した。

 周波数は順調に変化しているが、SWRの変化が不規則で、よく分からない。

 数字では分かりにくいので、グラフにしてみる。
  さらに両側を調べてみないと分からないが、この範囲では9cm付近に極小点、12cm付近に極大点のあるS字型のカーブだ。

 SWRが1.5以下を実用範囲とすると、7.5cm~10.5cmの広い範囲になる。

 大体のサイズで作りっぱなしでも良い、と言われるのはこういう事だろう。
 しかし、xを変化させると、SWRが最小になる周波数も、左のグラフのように大きく変わってしまう。

 これでは周波数を合わせればよいのか、SWRを最小にすれば良いのか分からない。
 そこで、周波数とSWRのグラフを描いてみると、右の通り。

 つまり、この寸法でループを作っておけば、給電点の位置を調整して、420MHz~450MHzくらいをSWR1.5以下に追い込めると言うことになる。

 ただし、これはあるxの値の時の周波数対SWR、すなわち出来上がりのアンテナのバンド幅を示すグラフではないので要注意。
  

 ある寸法の時の周波数特性は下の写真の通りだ。ディップの深さが20dB程だから、SWRにすると、1.2くらいになる。

 測定中、給電線にさわると、測定値が変化した。同軸ケーブルの外側に電流が流れているようなので、パッチンコアではさんでみた。左がコア無し、右がコア有り。 
  
  
 コアを入れると谷の形がマイルドになるように見えるが、谷底が浅くなっただけで、バンドがそんなに広くなったわけではない

 電流が外側に流れているということは、シュペルトップを入れると、何か良い効果があるかも知れない。

 なお、SWR1.5以下を実用範囲とすると、中心周波数から+-5MHzくらいだ。400MHzに対して10MHzは、2.5%のバンド幅になる。これを広いと見るか、まあ普通だろうと理解するか。



【とりあえず結論】
(1) ループの寸法は、短縮率1.0で計算して、λ/2×λ/6。
(2) 給電点は、端から0.13λあたりがベストポイント。
(3) バンド幅は10MHzほどある。
(4) 調整は5mmくらいの精度で合わせばよい。
(5) シュペルトップを入れると良さそうだ。


 具体的には、430MHzバンドのFMで出るのなら、中心周波数を433MHzで設計する。つまり、345mm×115mmの長方形のループを作って、端から90mmの所に給電する。

 これで、作りっぱなしでも十分使えるはずだ。


 因みに、CQ出版の「作るUHFアンテナ」という本に、430MHz帯のヘンテナの製作記事が有る。その記事では、ループの寸法は上記と同じで、給電点を動かした時のSWR最低点の周波数変化が表にしてある。433MHzは85mmあたりなので、大体私と同じ結論だ。



【蛇足】短縮率について
 フィーダーの「短縮率」と、アンテナの「短縮率」は意味が全く違う。

 フィーダーの短縮率は、フィーダー中を進む電磁波の速度と光速の比率だ。フィーダーの絶縁体(=誘電体)の誘電率によって決まる。本来は「速度係数」だが、フィーダーをλ/4に切り取ったりする時に、長さの計算に使うので「短縮率」などという言い方をする。


 一方、アンテナは、通常は空気中にある。空気の誘電率はほとんど1.0なので、空気中の電磁波の速度は光速に等しいと考えて良い。したがって、フィーダーの時に言う意味では「短縮率」は1.0のはずだ。

 例えば、ダイポールの場合、共振点(=0になる点)はアンテナの物理長がλ/2よりわずかに短い点にある。(アンテナの教科書のはじめの方に書いてある。)このことを指して「短縮率」と言っている。

 ところが、ループアンテナでは、共振点はアンテナの物理長がλ/1より少し長いところにあるので、短縮率が1.05などというおかしな表現になる。(延長率とでも言うべきか。)



 しかも、アンテナのエレメント長とフィーダーの長さについて、同じ「短縮率」という言葉を使うので、混同しやすい。

 実際、「アンテナは空気中にあるので、短縮率0.97を乗ずる」と書いてあるのを見かけることがある。本を書くほどの人でもそんな間違いをする。