バッファアンプの特性

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 発振回路が出来たので、次はバッファだ。

(1) 発振回路からの出力には、まだ高調波が含まれている。基本波より少なくとも60dBは減衰させること。

(2) 50Ωの負荷に、3Vの出力が出来ること。

  
 発振回路はコルピッツとする。

 コルピッツをチューンして、ここまできれいにしたのだが、まだ2次高調波が-40dBもある。

 あと20dB減らしたい。
  


 基本は2SK241のソース接地として、同調回路をどう入れるか検討する。

 まずは、当たり前に、ドレインに負荷として入れて、周波数特性を取ってみた。

 全然ダメ。

 写真のスパンは5MHzなので、1目盛りが500kHzだ。ピークが455kHz、1目盛り離れたあたりが2倍の910kHzだが、2dB程しか違わない。

 これでは第2高調波を取り除くことは出来ない。

 こういう当たり前の回路では、選択度は期待できないことが分かった。
  
  


 では、負荷とフィルタを別にしたらどうだろう。

 フェライトビーズで9:1のトランスを作って、負荷とする。IFTとは小容量で結合する。

 またもや失敗。何故かは分からないが、ハイパスフィルタのようになってしまった。なかなか手強いぞ。
  
  


 では、IFTをもう一個おごって、背中合わせにしてみる。

 おっ、こいつはなかなか良いじゃないか。低い方はバッサリ切れて、高い方も第2高調波のあたりは40dBほど下がっている。
 
  


 しかし、ゴテゴテしているなあ。9:1トランス無しではダメかな。

 やったね。回路が簡単になった上に、特性も良くなった。シンプルイズベスト、ということか。

 ドレインとIFTが明らかにミスマッチだが、大丈夫みたいだ。こういう事はやってみないと、理屈では予想できない。
  
  


 さらに、入力側に簡単なセラミックフィルタを入れてみる。

 うわあ、これは汚い。汚いけれども、減衰率は稼げている。これで行こう
  
  


 念のためだが、出力側にセラミックフィルタを入れたらどうなるだろう。

 だめだ、汚い上に、減衰率も悪くなった。
  


 実際に水晶発振器から455kHzを入れて、各部分のスペクトルを見てみる。
  
 【A点】

 バッファアンプの入り口。即ち、発振回路の出力そのもの。

 2次高調波が-40dB、3次、4次と10dBずつ下がって、5次以降は見えない。

(注)左端はスペアナの直流成分。これは無視する。
【B点】

 セラミックフィルタを通したスペクトル。

 おお、これで十分じゃないか。高調波が全く見えなくなった。

 後は、必要レベルまで増幅するだけだ。
【C点】

 と思ったら、何じゃあ、こりゃあ。

 せっかくきれいなスペクトルを、2SK241のアンプがひずませてしまっている。

 ダメじゃん。
【D点】

 1個目のIFTの出力。

 ちょっと綺麗になった。
【E点】

 2個目のIFTの入力側。

 一応、高調波は無くなったようだ。
【F点】

 バッファアンプを含めた、この水晶発振器の出力スペクトル。

 2次高調波以下は全く見えないので、分からないが、少なくとも-70dB以下にはなっている。

 十分綺麗な正弦波だと思うが、もう少し増幅する必要が有る。
  


 しかし、考えてみれば、「セラミックフィルタで綺麗にする」→「2SK241で汚くする」→「IFT2段で綺麗にする」であれば、最初のセラミックフィルタは不要だし、そもそも、水晶発振器の出力はそんなに綺麗でなくても良かったのではないか

 とりあえず、「455kHzの安定した」「綺麗な正弦波」までは出来たので、このルートの探索はここで一区切りにしよう。



 次の課題は「50Ω負荷に3Vの出力」、だ。

 これは、電力に換算すると、約200mWなので、QRP送信機並みの出力になる。はてさて、この綺麗な正弦波を崩さずに200mWに出来るのか。

 次のチャレンジを、お楽しみに。