木質バイオマス発電   2015.8/27


・考え事にもどる

   

 「里山資本主義」というなかなか面白い本を読んだことがある。

 日本には放置された杉林が非常に沢山ある。或いは、製材過程で廃材になる木材が大量に廃棄される。これらの、無駄な木材で発電したら良いんじゃないか。

 その考えには、もっともな部分もあるが、重大な問題点がある。

 それは、みんなが真似をし始めたらえらいことになる、ということだ。

 個人で薪ストーブを使ったり、かまどで煮炊きするのは良いだろう。過疎化で、人が少なくて、山ばかりの地方自治体で、木質バイオマス発電を細々とするのも良い。



 しかし、そんな事を日本中でやりだしたら、すぐに木材が足りなくなるのは目に見えている。

 木材の再生産には何年、何十年もの歳月が必要だ。そんなものを大々的に燃やしてエネルギー源にするなどは正気の沙汰ではない。



(1) 第2次世界大戦中に、日本中の里山のかなりの部分が「ハゲ山」になってしまった。
 年配の人なら憶えているだろう。しかし、戦後、はげ山を再生する運動があったり、大々的に杉の植林が行われたので、「ハゲ山」の事を知る人は少なくなった。

(2) 現時点で、既に、丸太の価格が上昇している。建築用と発電用の木材の奪い合いが始まっている。



 バイオエタノールの原料にするために、トウモロコシが高騰したのを忘れたのだろうか。

 パーム椰子を植えるために、ジャングルが失われているのは知っているはずだ。



 安易に、森林を「資源」と見なすのはやめてもらいたい。

 かつて、山で柴刈りをしたり、薪を作ったりして生活できたのは、消費エネルギーが極めて少なかったからだ。

 現代のエネルギー消費量から考えて、その数パーセントでも木材で発電しようと思うのは大間違いだ。