本当の理由   2014.12/16


・考え事にもどる

   

 第二次世界大戦が終わって、その後70年ほどの間、日本は戦争をしなかった。その間世界中で戦いの無い日はほとんど無かったので、日本の平和は奇跡的と言っても良い。

 その理由について、大きく2つの陣営が対立して意見を戦わせている。
(1) 日本は平和憲法、中でも不戦を明記した9条によって平和を保ってきた。
(2) 日米安全保障条約によって、強大な通常兵力と、核兵器による抑止力によって、日本は守られてきた。

 歴史に「もしも」はないと言うが、強いて憲法9条も日米安保条約もなかったら、どうなっていたか考えてみる。

 結論から言うと、日本はここまで繁栄していなかっただろうが、戦争もしていなかっただろう。

 実際、この70年の間、日本が戦争に巻き込まれそうになったが、憲法9条や安保条約のおかげで助かった、という歴史的事実は存在しない。

 日本がこの70年間戦争をしなかった理由は、次の2つだ。
(1) 日本人に戦争の記憶がある間、深く強い厭戦気分が日本を支配していた。
(2) 日本を戦争に巻き込むほどのイベントや、日本に攻め込むほどの力を持った国が近くに存在しなかった。


 9条はアメリカに押しつけられた、という主張がある。それはそうかも知れない。しかし、日本国民は新憲法を歓迎した。

 日本は近隣の諸国に攻め込んで、甚大な被害を与えた。何より、日本自身がもう立ち上がれないのではないかというほどの損失を被った。無数の人間が死んだ。ほとほと戦争はいやだ。

 そこへ、戦争はやめよう、軍隊はなくそう、という提案があったのだから、大喜びで受け入れた。「押しつけられた」というのは、後世の想像力のない人間の偏見だ。

 その後、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争など、日本が戦争に巻き込まれるかも知れない機会が何度か有った。あの時、もし9条が無かったとしても、日本は首を突っ込むことは無かっただろう。

 戦争をしてはならないと身を以て知り、戦争は二度といやだと思う人が社会の中で発言力を持っていたから。


 では、安保条約は日本を守ったか。これはもっとハッキリしている。そんなことは1度も無い。それは安保条約が役立たずだと言うことではなくて、そういう機会がなかった、というだけだ。

 中国や北朝鮮が軍事力を強化し、しかも無茶苦茶な行動をして、日本の安全が脅かされるようになったのは、ここ10年ほどのことだ。

 それ以前は、遠路はるばる日本に害を為そうとする国は無かった。


 さて、そもそも安保条約は冷戦時代に、アメリカがソ連や中共に対抗するために、日本を浮沈空母として必要としたから作られた。別に、日本のための条約ではない。

 さらに、第二次世界大戦でのアメリカの敵国の軍事力を長期的に支配下に置く仕組みでもある。日本がアメリカの敵国だったことを忘れてはならない。


 ヨーロッパにおいても、NATOがソ連に対抗する軍事連盟であると共に、その裏では、ドイツ軍をアメリカの支配下に置くための仕組みでもあった。


 というわけで、戦後70年、日本が平和だったのは憲法9条のおかげでも安保条約のおかげでもない。

 しかし、今や国内も国外も情勢は変わった。今までの延長線上ではなく、現状をきちんと分析して、日本の安全と平和をどう守るか、考えなければならないが、それはまた後日。