真空管アンプ    2015.12/9


・考え事にもどる

   
  
 電子回路の主役が真空管から半導体に移って久しいが、近頃は真空管が見直されてきて、真空管アンプがずいぶん高値で売られていたりする。

 そこで、真空管の音の方が「好きだ」と言うのならよく分かる。私もそんな気がする。しかし、真空管の方が「良い」と主張するのはどうだろう。

 かつて、真空管からトランジスタへの移行期に、そんな議論は嫌ほどされてきて、結論は出たはずだ。

 ブラインドテストで著名なオーディオ評論家が軒並みだまされた、という記事がオーディオ雑誌によく出ていた。

 好みの問題以上の議論は無駄だろう。



 しかし、トランジスタやFETより真空管でやった方がいまくいく、という分野はある。最近、私もある回路を真空管でつくろうと思って、色々調べる機会があった。

 その中で、未だに不毛なオーディオ談義をしている人たちが居ることを知ったので、面白いから、私の思いつきを記録しておくことにする。



 それは、ヒーターの交流点火を主張する人が存在することだ。交流点火の方が深みや暖かみのある、真空管の良さを引き出せるという。

 ネットを這い回って、交流点火が良いという理由をあれこれ読んでみたが、屁理屈以上のものは見つからなかった。しかし一方で、現に交流点火の音の方が良い、という人が居る。

 理由を考えてみた。

 やった人には分かるが、真空管アンプを作る時、ヒーターから混入するハム音を無くす(小さくする)のに、どれほど苦労することか。ヒーター線をツイストペアにしたり、ハムバランサーをつけたり。

 ハム音は50または60Hzだから、人の耳にはほとんど(とは言い過ぎか。あまり)聞こえない。普通に「ブ〜ン」と聞こえているのは倍音の100または120Hzの音、あるいはもっと高い音の混じったものだ。

 従って、耳でハムが聞こえないところまで追い込んでも、原音の50,60Hzはわずかに残っている可能性が高い。

 音としては聞こえていなくても、人間はかなり高い音や低い音を「感じている」のはよく知られたことだ。

 わずかに「感じている」ハム音が聴覚をマスクして、アンプの欠点を目立たなくしている、という解釈はどうだろう。