水晶発振器(1)

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 予備実験。

 27MHzのHC18Uの水晶があったので、2SC1815BLのコルピッツ発振回路でやってみる。

 出力はエミッタから取り出して、2SK19のソースフォロワのバッファへ。

 極めて当たり前の発振回路だ。
 こんな感じ。

 上が発振ユニット、下がバッファユニット。

 同調回路がどこにもないので、結果は想像がつく。
 当然こうなる。

 この水晶は3倍オーバートーンだと思うが、基本波の9MHzで発振している。

 高調波は200MHz付近まで出ている。第2,第3高調波は基本波より10dBも下がっていない。

 こんな事では道のりは遠いな。
  
【参考になる記事】
水晶デバイス基礎講座:セイコーエプソンの技術者による全12回の連続講座。

技術情報と注意事項:エプソンの技術資料。

水晶振動子の特性と発振回路について:京セラの技術資料。



 さて、普通の水晶を普通の発振回路で発振させると、大変汚い波形が出ることがよく分かった。みんながこんなものを平気で使っているのは、後ろに同調回路がついているからだ。

 しかし、水晶のQは非常に高いのだから、本来ならフィルター無しでもきれいな正弦波が出るはずだ。



 今回の課題を再掲する。

(1) 455kHzの発振器。

(2) きれいな正弦波。

(3) 50Ω負荷で、3Vの出力。



 まず第1の課題、455kHzの発振から取りかかる。

 ネットを漁ってみると、低い周波数の水晶発振が面倒臭いのが分かってきた。

 アマチュア無線の475kHzバンドの自作記事では、たった7kHzしかバンド幅がないのに、VXOは使われていない。高い周波数から分周している。

 直接発振させるのが、余程面倒臭いのだろうか。



 とりあえず、やってみよう。
  
 水晶を455kHzのHC6Uに換えてみた。

 当然発振しません。

 コンデンサを25pF×2から、増やしていく。

 220pF発振せず。390pF発振せず。

 680pF発振した。やったね。
 ただし、スペクトルはこんな具合。

 第10高調波までは、基本波と同じくらいの強さだ。

 一応発振はするが、このコンデンサの値はどれくらいがベストなのだろうか。

 本当なら、この水晶の負荷容量ピッタリにすればよいのだが、データがないので分からない。
 コンデンサの値を色々変えて、基本波の強度を比べてみた。(-80dBは発振が止まっている状態。)

 横軸は容量(pF)、縦軸は基本波の強さ(dBm)。

 600pFから1000pF辺りが最強だが、いかにも崖っぷちだ。

 1000〜3000pFの間が安定して良いだろう。
 高調波がドッサリ出ているので、どんな波形かというと、こんな感じ。

 輝線がにじんで見えるのは、ノイズが乗っているから。

 奇数次だけでなく、偶数次の高調波も出ているのが波形から分かる。

 とりあえず、455kHzを安定に発振する、という課題はクリアしたので、次はきれいな正弦波だ。
 そこで、コンデンサは2000pFに固定しておいて、バイアス抵抗を大きくして、発振を弱くする

 どんどん発振を弱くすると、スペクトルは下の写真の様に、きれいになっていく。
  
 一番下の右は、信号が小さくなって見えないので、目盛りを変えたから注意。

 発振を弱くすると基本波も小さくなるが、高調波が急激に減って、スペクトルがきれいになっていくことが分かる。


 それじゃあ、出来るだけ発振を弱くして、不安定にならないようにAGCをかけたらよいだろうと、考えた。

   
 ところがギッチョン。そう簡単にはいかない。一番最後のスペクトルの、オシロ波形がこれ。

 確かに、波形は正弦波に近づいた。

 しかし、このように輝線がひどくにじんでいるのは、基本波が弱くなって、ノイズと差が無くなったから。

 ある程度の発振強度がないと、S/Nが悪くなる。難しいぞ。
  
 もともとコルピッツ発振回路は波形が汚いのは知られている。これ以上は無理かも知れない。

 他の発振回路を検討する前に、信号の取り出し口を変えてみた。

   
 水晶自体はQが高いので、きれいな正弦波を出していても、アンプでひずませている可能性がある。

 発振回路からバッファへの接続を、エミッタから取らずに、水晶から直接に変えてみた。

 残念ながら、ほとんど良くならない。ちょっと、意外だ。
 バイアス抵抗を変化させて、発振の強さを変える方法では、トランジスタの動作点までデタラメに変わってしまう。

 そこで、信号の取り出しだけでなく、バイアスとフィードバックコンデンサも検討し直して基板から作り直してみた。

 バイアスは電流帰還バイアスに変える。帰還量や動作点はC1とR1で調整する。
 C1=1000pF、R1=80kΩにした時が、一番スペクトルがきれいになった。

 トランジスタを2N3904にしたのは、手持ちの2SC1815がBLランクで、扱いにくかったから。

 電源は5Vに下げてみたが、発振が弱くなるだけで、スペクトルはきれいにならないので、9Vに戻す。
 結果は上々。

 コルピッツ発振回路の波形の汚さを知っている人なら、驚くはず。(このページの上から2番目のスペクトルと比較してみよう!)

 第2高調波は基本波より43dB低い。第3高調波はさらに10dB以上低い。第4高調波はさらに10dBひくく、第5高調波以下はノイズレベルだ。

 この後ろに狭帯域バッファを入れれば、十分きれいになるはずだ。